サイクルロードレースを見る時には、ジャージ獲得のルールを理解するのが判りやすいと思います。
ツール・ド・フランス(以下、ツールドフランス)の4賞ジャージから入門する楽しみ方を紹介していきます。
ツールドフランスの概要
2023年のツール・ド・フランスは
開催期間:2023年7月1日~7月23日
第1~3ステージはスペインでのレースになります。
2022年のデンマーク開幕に続き、2023年もフランス国外での開幕となっています。
開幕地は、スペイン・バスク州の街ビルバオです。
ツール・ド・フランス2023の各ステージ概要は以下の通りです。
日付 | ステージ | コース | 距離 | 概要 |
---|---|---|---|---|
7月1日(土) | 第1st | ビルバオ〜 ビルバオ(スペイン) | 182km | 丘陵 |
7月2日(日) | 第2st | ビトリア・ガスティス〜 サンセバスティアン(スペイン) | 209km | 丘陵 |
7月3日(月) | 第3st | アモレビエタ・エチャノ (スペイン)〜バイヨンヌ | 185km | 平坦 |
7月4日(火) | 第4st | ダクス〜 ノガロ | 182km | 平坦 |
7月5日(水) | 第5st | ポー〜 ラランス | 165km | 山岳 |
7月6日(木) | 第6st | タルブ〜 コトレ・カンバスク | 145km | 山岳 |
7月7日(金) | 第7st | モン・ド・マルサン〜 ボルドー | 170km | 平坦 |
7月8日(土) | 第8st | リブルヌ〜リモージュ | 201km | 丘陵 |
7月9日(日) | 第9st | サンレオナール・ド・ノブラ 〜ピュイ・ド・ドーム | 184km | 山岳 |
7月10日(月) | 休日 | |||
7月11日(火) | 第10st | ブルカニア 〜イソワール | 167km | 丘陵 |
7月12日(水) | 第11st | クレルモンフェラン〜 ムラン | 180km | 平坦 |
7月13日(木) | 第12st | ロアンヌ〜 ベルヴィル・アン・ボジョレー | 169km | 丘陵 |
7月14日(金) | 第13st | シャティヨン・シュル・シャラロンヌ〜 グランコロンビエール | 138km | 山岳 |
7月15日(土) | 第14st | アンヌマス〜 モルジンヌ・レ・ポルトデュソレイユ | 152km | 山岳 |
7月16日(日) | 第15st | レジェ・レ・ポルトデュソレイユ〜 サンジェルベ・モンブラン | 180km | 山岳 |
7月17日(月) | 休日 | |||
7月18日(火) | 第16st | パシ〜コンブルー | 22km | 個人TT |
7月19日(水) | 第17st | サンジェルベ・モンブラン〜 クーシュベル | 166km | 山岳 |
7月20日(木) | 第18st | ムーティエ〜ブールカンブレス | 186km | 丘陵 |
7月21日(金) | 第19st | モワラン・アンモンターニュ〜 ポリニー | 173km | 平坦 |
7月22日(土) | 第20st | ベルフォール〜 ル・マクルスタイン・フェレルリン | 133km | 山岳 |
7月23日(日) | 第21st | サンカンタン・アン・イブリーヌ〜 パリ・シャンゼリゼ | 115km | 平坦 |
ツールドフランス4賞ジャージ獲得ルール
ツールドフランスを初めて見る方は、ジャージの種類から覚えるとレースへのが理解が深まりやすいと思います。
ジャージには4賞ジャージともよばれる4つのジャージが特別にあります。
「マイヨ・ジョーヌ」黄色のジャージ
「マイヨ・ブラン・ア・ポアルージュ」赤い水玉模様の白いジャージ
「マイヨ・ヴェール」緑のジャージ
「マイヨ・ブラン」白いジャージ
この4つのジャージの獲得ルールを覚えると、ツールドフランスがグッと身近な存在に感じてきます。
総合トップの「マイヨ・ジョーヌ」
ツールドフランスは、全ステージを総合して、一番短い時間で走り切った選手が優勝します。
全21ステージで距離・勾配・高低差・起伏数など条件が違っているので、ステージ毎に勝利することで総合トップになれるわけではありません。
平坦なステージが得意なスプリンター達は、平坦ステージでは強さを発揮しますが、山岳になるとゴール時間切れにならないようにサポート(風よけ,ペーサー)を引き連れてステージを乗り切るのがやっとになる選手も多くいます。
山登りが不得意でも後述するスプリンターの称号「マイヨヴェール」(緑のジャージ)を狙って戦略を立てます。
全ステージで勝利者が変わってくると言っても良いほどなのですが、総合トップの「マイヨ・ジョーヌ(フランス語で“黄色のジャージ”)」を狙う選手はステージ優勝しなくても、各レースで「マイヨ・ジョーヌ」を狙っているライバル選手に動きを見て時間差をコントロールできる位置取りをチームサポートを受けて走っています。
いつも一番にいないのに総合トップに立っているので不思議に思う所でもあります。
その21ステージの各ステージが終了した時点で、そこまでの所要時間の合計が一番短い選手が総合トップに立っていることになり、各ステージの終了後に「マイヨ・ジョーヌ」が贈られます。
選手の誰もが一度で良いから袖を通したいと願っているジャージです。
山岳王の「マイヨ・ブラン・ア・ポアルージュ」
山登りを得意とする選手が狙うのが、「マイヨ・ブラン・ア・ポアルージュ」(赤い水玉模様の白いジャージ)です。
独特な白地に赤の水玉模様のポップなジャージなので、よく目立って、見ているとすぐに気が付きます。
「マイヨ・ブラン・ア・ポアルージュ」は、各ステージ中に山岳ポイントを獲得できる場所が数か所設定されていて、その地点を通過した順位によってポイントが加算され、各ステージ終了時点での合計ポイントが一番多い選手に贈られます。
そんな「マイヨ・ブラン・ア・ポアルージュ」が競われる山岳ポイント獲得地点でのスパートは、見ている方も力が入らずにいられません。
このポイントは、1回1ポイントではなく、その山岳コースの難易度によって点数が大きく違っています。なので難易度の低いコースよりも、難易度の高いコースでポイントを獲得した方が「マイヨ・ブラン・ア・ポアルージュ」に近づけることになります。
ツールドフランスでの山岳賞の「マイヨ・ブラン・ア・ポアルージュ」を獲得することは「マイヨ・ジョーヌ」を獲得するのと同じくらい難しいことなのでレース途中の山岳ポイント設定地点ごとに注目される部分になってきます。
山岳ポイントの配分
ツールドフランスの山岳コースにはカテゴリーと言われる難易度が設定されていて、
難易度の高い順にカテゴリー超級、1級、2級、3級、4級
となっています。
各ステージ(平坦,タイムトライアルステージ除く)の中に数か所、山岳ポイントを獲得できる場所(基本的に山頂)が設定されています。
カテゴリー超級、1級、2級、3級、4級で獲得できるポイントが違っていて、急勾配で距離があるほど難易度が高いカテゴリーとなっていて高ポイントを獲得できます。
「マイヨ・ブラン・ア・ポアルージュ」を狙う選手は、山岳ポイントをどのように獲得するかの戦略を立てることになってきます。
スプリンターの「マイヨヴェール」
ステージ中にスプリントポイント(基本的に中間とゴールの2か所)が設定されていて、上位で通過した選手にポイントが付与されていきます。比較的平坦な場所でスピード勝負の得意な選手が「マイヨヴェール」(緑のジャージ)を狙っていきます。
山岳ポイントは各ステージに数か所あり、山登りした地点に設定されているのに対して、スプリントポイントはタイムトライアルを除く各ステージに1個所の中間スプリント地点と、ゴール地点に設定されたポイントが設定されています。
「マイヨヴェール」を着た選手は瞬発力を秘めたスプリンターだと思えば間違いありません。
スプリントポイントの配分
中間スプリント地点で獲得できるポイントは、1位が20ポイントとなり、15位通過までポイントを獲得できます。
先頭の逃げ集団にいないと中間地点での高ポイントの獲得ができません。
ただ、先頭集団の人数が15人以下の場合は、メイン集団にいてもポイント獲得ができることになります。
一方、ゴール地点で獲得できるポイントは、コース難易度により違っています。
スプリンターが本領を発揮できる平坦ステージでは、1位:50ポイントの高ポイントが与えられます。
山岳ステージの場合は1位:30ポイント、個人タイムトライアルでは1位:20ポイントとなってきます。
スプリンターにとっては、難易度が高くなってくる山岳ステージでのポイントも20,30ポイントあるので、山岳ステージをどのようにクリアしていくかによって「マイヨヴェール」の行方も変わってくることがあります。
優勝を狙える若手筆頭の「マイヨ・ブラン」
開催年度内で25歳以下の誕生日を迎える選手が該当となるのが「マイヨ・ブラン」(白いジャージ)で、U25の総合成績(時間)最上位選手となります。
「マイヨ・ブラン」を着る選手は近い将来「マイヨ・ジョーヌ」を狙える選手でもあります。
2020年ツールドフランスで21歳11カ月29日で戦後最年少覇者となったタデイ・ポガチャルは、もちろん「マイヨ・ブラン」も獲得しています。
その他の賞
ステージ優勝
全21ステージで各ステージの優勝者が出ます。
ステージ優勝であって、総合優勝ではないのですが、1つのステージを獲ると言うだけでも競技人生の栄誉になる賞です。
約180人の出場選手の中でステージ優勝が狙えるのは半分程度と考えられます。
案外チャンスがあるようですが、ツール・ド・フランスに出場する選手は超一流選手ばかりなので当然です。
ただし、実際にステージ優勝できる人数はその年に21人以下となります。
敢闘賞(ドサール・ルージュ)
各ステージで最も果敢な走りを見せた選手に贈られるのが「ドサール・ルージュ」(赤いゼッケン)です。
この賞は、審査員の主観で選ばれるので、明確な順位を決める基準がないので、4賞を獲れなくても努力を認めてもらえることになり、受賞した選手はとても励みになります。
終盤まで逃げて先頭に立ってレースを引っ張った選手などが選ばれる可能性が高くなります。
過去に日本人で受賞したのが別府史之選手や新城幸也選手になります。
ツールドフランスの面白さ
ジャージのことが判れば、ツールドフランスは判ったも同然です。
後は見るのみです。
見ていると都度不思議な光景を目の当たりにします。
その光景では解説が入ることも多いのでテレビを見ていれば自然に判ってくるところもありますが、知っていると面白さが倍増する部分でもあります。
集団が分散する
レース展開によりますが、基本的に逃げ集団が形成されます。
その後に第2,第3の集団が形成されていきます。
多くの場合の集団は意図して出来ている場合が多くなります。
「マイヨ・ジョーヌ」を狙うには、総合的に強い選手達がけん制しあいます。「マイヨ・ジョーヌ」を狙っている選手一人が逃げると言う展開にはなりくいのも不思議に感じるかもしれません。
「マイヨ・ジョーヌ」を狙うのであれば、一人で逃げていけばライバルに時間差をつけられるのですが、レースでは一人で走るよりもチームで隊列を作って走った方が交替で先頭を走って風除けになるなど体力的に有利に展開できる特性があり、「マイヨ・ジョーヌ」を狙う選手が逃げようとしてもチームの隊列で追いかけると簡単に追いつけることが多いので、結果的に「マイヨ・ジョーヌ」を狙うチームの集団が出来てしまいます。
また、先述しましたが「マイヨヴェール」(緑のジャージ)を狙うスプリンターの多くは山岳になると遅いので、ステージで時間切れ失格にならないようなペースで乗り切ろうとして集団になって走ります。
ステージによって集団のでき方が変わってくるので、どのような展開になるのかも毎ステージの面白さになってきます。
集団の先頭が入れ替わる
集団の先頭を走っていた選手が急に最後尾まで下がって追従し始めます。
そして次に先頭に立った選手は必死に自転車を漕ぎ始めます。
逃げに出ているわけではなく、進んで風よけになって後方の集団を引っ張っていきます。
これは自転車上で受ける向かい風で体力が減っていかないようにする手段で、交替しながら先頭を走ることで集団のペースを上げていく協力プレーになります。
暗黙のルールですが、先頭を走らずに自分だけ体力を温存する選手はいません。仮にそのような作戦で勝利しても気分が悪く、周りにも認めてもらえないからです。
ただし、チームの隊列で交替して先頭を走る場合は、チームのエースをサポートすることが目的なのでエースが先頭を走ることは少なくなってきます。
堂々と勝負する
もし強力なライバルがトラブルで停車してしまったとします。
基本的にエースであればチームメイトがサポートのため停車して、治療や自転車交換を行って復帰した後に隊列で前の集団に追いついていきます。
ただ、ライバル関係の選手も、停車した選手が止まっている間に逃げてしまうわけでもなく、復帰するのを待っているように見えることがあります。
トラブルだから仕方ないんじゃ?とも思うのですが、まだ残り距離のある時点では復帰を待って、堂々と勝敗を決着しようとします。相手の弱みに付け込んで勝っても尊敬を得られないからです。
集団は同タイムゴール
時間を競うツールドフランスなのですが、その時の1秒を競っていない点もちょっと不思議に思うはずです。
ステージ優勝するには、わずかでも早くゴールすることが必要なのですが、それ以降の選手は約3秒未満でゴールすれば同タイムと扱われます。
混戦での落車を防ぐなどの安全面での配慮になります。
ツールドフランスまとめ
ジャージの種類が判れば、ジャージを狙う理由が判り、紳士協定により正々堂々と勝負をしていく、そんな3週間21ステージが毎日楽しくないわけがありません。
2023UCIワールドチーム
ツール・ド・フランスをリードする2023年UCIワールドチームは次の通りです。
ツールドフランスを見尽くす
ツールドフランスを見尽くすには、JSPORTSオンデマンドがおすすめです。
3週間21ステージを楽しみ尽くすなら、見逃し配信・ビデオ配信もある『J SPORTSオンデマンド』が最適です。
外出先でもチェックでき、見逃した場合でも確り見逃し配信してくれるので、見れなかったステージなんて無くなります。