MLB(メジャーリーグベースボール)は、アメリカンリーグ(以下、ア・リーグ)とナショナルリーグ(以下、ナ・リーグ)の2リーグ制になっていますが、交流戦を含めレギュラーシーズンで各チームが162試合を戦います。
NPBの様に毎週月曜日が休みと言うことは無く、シーズン中は連戦が続き、連戦中のダブルヘッダーも行われます。
そんな過酷なシーズンを勝ち切りMLBの覇者となるための戦力補強にトレードは重要な役割を果たします。
トレード理由は様々になりますが、大物選手もトレードの対象になりやすいMLBのトレード事情を解説します。
2023シーズンの日本関係メジャー登録選手
リーグ | チーム | 選手名 |
---|---|---|
ア・リーグ東地区 | トロント・ブルージェイズ | 菊池雄星 |
ア・リーグ東地区 | ボストン・レッドソックス | 吉田正尚 |
ア・リーグ中地区 | ミネソタ・ツインズ | 前田健太 |
ア・リーグ西地区 | ロサンゼルス・エンゼルス | 大谷翔平 |
ア・リーグ東地区 | →7/20ボルティモア・オリオールズ | 藤浪晋太郎 |
ナ・リーグ東地区 | ニューヨーク・メッツ | 千賀滉大 |
ナ・リーグ中地区 | シカゴ・カブス | 鈴木誠也 |
ナ・リーグ中地区 | セントルイス・カージナルス | ラーズ・ヌートバー |
ナ・リーグ西地区 | サンディエゴ・パドレス | ダルビッシュ有 |
※現時点の正確な情報は各放送配信およびサービスサイトで確認の上、ご利用ください。
MLBのトレードは当たり前
MLBでは、トレードが当たり前のように行われます。
トレードデッドライン(トレード期限)とチーム成績
MLBのトレードは日常茶飯事な出来事です。
レギュラーシーズン中のトレードは、ある程度制限するために、トレードできる最終日を『トレードデッドライン』として設けています。
トレードデッドラインは、年ごとにリーグの規則や労使協定によって異なる場合があるものの、通常は7月末(7月31日現地16時)となっています。[2023年は現地8月1日18時(日本時間8月2日7時)がトレードデッドラインとなりました]
通常7月末がトレードデッドラインとなっている理由は、この時期がシーズンのチーム成績を見定められる頃だからです。
この時期になるとワールドチャンピオンを狙えない成績のチームが出てきます。そんなチームは来季構想を優先してトレードを模索します。一方、ワールドチャンピオンを狙いたいチームは、不足する戦力を分析し、即戦力となる選手を獲得しチーム力アップを考えます。
両者の思惑が一致すれば、トレードが成立し易くなります。30球団もあるMLBなので、3球団を跨いだトレードなども実現します。
2023トレードデッドラインでの主なトレード実績
2023年のトレードデッドラインが経過し、2023シーズンの大型トレードは終了となっています。
2023シーズンのトレードデッドライン直前順位(地区順位およびワイルドカード順位)と各チームの補強状況をまとめました。(2023.8.2)
2023ア・リーグにおけるトレード獲得補強状況
ア・リーグ東地区 | |||||
順位 | チーム名 | 勝率 | WC 順位 | 補強選手 | 前所属チーム |
1 | オリオールズ | .613 | 地区 首位 | 藤浪晋太郎(投) J.フレアティ(投) | アスレチックス カージナルス |
2 | レイズ | .596 | 1 | A.シバーレ(投) | ガーディアンズ |
3 | ブルージェイズ | .551 | 3 | J.ヒックス(投) P.デヨング(内) G.カブレラ(投) | カージナルス カージナルス カージナルス |
4 | Rソックス | .528 | 4 | L.ウリアス(内) | ブリュワーズ |
5 | ヤンキース | .519 | 6 | K.ミドルトン(投) | Wソックス |
ア・リーグ中地区 | |||||
順位 | チーム名 | 勝率 | WC 順位 | 補強選手 | 前所属チーム |
1 | ツインズ | .505 | 地区 首位 | D.フローロ | マーリンズ |
2 | ガーディアンズ | .495 | 8 | N.シンダーガード | ドジャース |
3 | タイガース | .443 | 9 | ||
4 | Wソックス | .402 | 10 | ||
5 | ロイヤルズ | .299 | 11 | ||
ア・リーグ西地区 | |||||
順位 | チーム名 | 勝率 | WC 順位 | 補強選手 | 前所属チーム |
1 | レンジャーズ | .566 | 地区 首位 | A.チャプマン(投) M.シャーザー(投) J.モンゴメリー(投) C.ストラットン(投) A.ヘッジズ(捕) | ロイヤルズ メッツ カージナルス カージナルス パイレーツ |
2 | アストロズ | .561 | 2 | K.グレーブマン(投) J.バーランダー(投) | Wソックス メッツ |
3 | エンゼルス | .523 | 5 | L.ジオリト(投) R.ロペス(投) D.リオン(投) R.グリチック(外) CJ.クロン(内) M.ムスタカス(内) E.エスコバル(内) | Wソックス Wソックス メッツ ロッキーズ ロッキーズ ロッキーズ メッツ |
4 | マリナーズ | .519 | 6 | ||
5 | アスレチックス | .280 | 12 |
2023ナ・リーグにおけるトレード獲得補強状況
ナ・リーグ東地区 | |||||
順位 | チーム名 | 勝率 | WC 順位 | 補強選手 | 前所属チーム |
1 | ブレーブス | .644 | 地区 首位 | B.バンド(投) P.ジョンソン(投) N.ロペス(内) | ロッキーズ ロッキーズ ロイヤルズ |
2 | フィリーズ | .538 | 2 | M.ロレンゼン(投) R.カストロ(内) | タイガース パイレーツ |
3 | マーリンズ | .533 | 3 | J.バーガー(内) J.ベル(DH) D.ロバートソン(投) J.ロペス(投) | Wソックス ガーディアンズ メッツ ツインズ |
4 | メッツ | .476 | 8 | ||
5 | ナショナルズ | .421 | 11 | ||
ナ・リーグ中地区 | |||||
順位 | チーム名 | 勝率 | WC 順位 | 補強選手 | 前所属チーム |
1 | レッズ | .546 | 地区 首位 | S.モール(投) | アスレチックス |
2 | ブリュワーズ | .533 | 3 | Mカナ(外) A.チェイフィン(投) C.サンタナ(内) | メッツ D.バックス パイレーツ |
3 | カブス | .500 | 6 | J.カンデラリオ(内) J.クアス(投) | ナショナルズ ロイヤルズ |
4 | パイレーツ | .448 | 9 | ||
5 | カージナルス | .439 | 10 | ||
ナ・リーグ西地区 | |||||
順位 | チーム名 | 勝率 | WC 順位 | 補強選手 | 前所属チーム |
1 | ドジャース | .567 | 地区 首位 | L.リン(投) J.ケリー(投) R.ヤーブロー(投) A.ロサリオ(内) E.ヘルナンデス(内) | Wソックス Wソックス ロイヤルズ ガーディアンズ Rソックス |
2 | ジャイアンツ | .542 | 1 | AJ.ポロック(外) M.マティアス(内) | マリナーズ マリナーズ |
3 | Dバックス | .533 | 3 | P.シーウォルド(投) P.ストルゼレッキ(投) T.ファム(外) | マリナーズ ブリュワーズ メッツ |
4 | パドレス | .486 | 7 | 崔 志萬(DH) R.ヒル(投) G.クーパー(内) S.バーロー(投) | パイレーツ パイレーツ マーリンズ ロイヤルズ |
5 | ロッキーズ | .396 | 12 |
トレードデッドラインが必要な理由
8月以降は、ポストシーズン出場の可能性がさらに絞り込まれていきます。そんな段階で、絞り込まれた少ないチームで補強競争が起こると、トレードの成否によってポストシーズンに向けた影響が大きくなりすぎるため、不公平な戦力補強が生じる可能性が出てきます。本来の競争の面白さが削がれては意味がありません。
また、トレード対象となる選手の精神的な負担もトレードデッドラインによって解消され、プレーに集中できる様になります。
これらの理由から、MLBのトレードデッドラインが設けられています。
トレードデッドライン以降のトレード
そうは言っても、トレードデッドライン以降にトレードとなる場合も出てきます。
MLBは、40人のロースター枠があり、メジャー契約する選手となります。その中の26人はアクティブロースターと呼ばれるベンチ入りメンバーになります。
ベンチに入らない14人の選手は、メジャー契約選手として、マイナーの試合で調整しながら、アクティブロースターに呼ばれるように頑張ります。
トレードデッドラインの対象は、ロースターの40人の選手であり、マイナー契約選手は年中トレードが可能です。
そしてロースターは固定では無く、入れ替えが起こります。ロースターを外された選手は、ウェーバー公示と呼ばれる権利放棄選手となります。通常、戦力外と報道されるのがロースターを外されウェーバー公示された状態を示しています。
ウェーバー公示された選手は、その選手に興味を示した球団が獲得する場合もあれば、マイナー契約する場合、自由契約になる場合もあります。
2023年エンゼルスの8月末でのチーム解体
2023年のエンゼルスは、7月のトレードデッドラインでは、買い手になりチーム補強を行いました。
しかし、チームは連敗が続き、補強の成果が出ずに、プレーオフ進出も難しくなってしまいました。
そこで8月末になってから、7月に補強した選手を含んだ40人ロースターの高額年俸で今季オフにFAとなる選手をウェーバー公示する手続きを行ったと報道されています。
この目的は、高額年俸選手の残りシーズンの報酬支払いを削減すること、そしてチームの年俸総額を引き下げることで贅沢税と呼ばれるペナルティーを削減することになります。
8月末となって、トレードはできないのですが、チーム成績を諦め、無償で選手を手放すことでチームの財政を改善する方策を探ったと言えます。
プレーオフに進出するチームは、9月1日までに40人ロースターに登録した選手でなければ、プレーオフに出場させることができないルールがあるため、8月末に戦力となる有望な選手がウェーバー公示されれば、8月中に獲得し、40人ロースターに登録したいと考えるはずです。
ウェーバー公示された選手を獲得したチームは、シーズン残り2ヶ月程度の年俸を支払うことになります。
大物選手を放出する理由
MLBでは、大物選手を放出するケースが多く見られます。
年俸調停とFA権がトレードに直結
MLBのメジャー選手(ロースター枠の選手)は、3年で年俸調停の権利を得ます。
年俸調停で契約合意しない場合は、ノンテンダーFA選手となり、他球団への移籍が可能となります。
また、正式なFA権はメジャー6年(ロースターに6年在籍)で権利を得ます。
今後FAの権利を得る選手は、FAにより自由に他球団と契約できることになるので、選手を保有して来た球団は、再契約を提示して合意するか、選手を放出するかの選択になってきます。選手と合意できない場合は、得るものがないまま、選手が出ていくことにもなることから、トレード要員とした方が得だと考える場合があります。
このため、トレードデッドラインまでに成績不振のチームは、来季の戦力を整えるために、FAとなる大物選手をトレード要員にして、来季構想に当てはまる選手の獲得を優先します。大物選手のFA獲得は、トレード先でも同じことですが、多くの場合、優勝争いのため大物選手が必要な戦力と考えるチームが相手となり、FAの有無よりもチームをワールドチャンピオンに導いてくれることを期待します。
トレードは拒否できるの?
MLBのトレードは球団が決めるのですが、トレード拒否権を持つ選手もいます。
アクティブロースター10年相当以上やチーム所属5年以上の選手です。
それ以外に、契約時にトレード拒否に関する事項を決めている選手もいます。
そのような選手は、トレードを拒否することができます。
MLB情報番組
MLBに関する情報番組でトレードに関する情報を得ることもできるでしょう。
おすすめは「MLBイッキ見!」です。
「MLBイッキ見!」は、毎週金曜日の午後10時00分~10時45分(45分)にJSPORTSで放送されます。
キャスターはAKI猪瀬と津田麻莉奈です。(敬称略)
AKI猪瀬さんのMLBに関する知識は他を寄せ付けません。
「MLBイッキ見!」は、初回放送が無料放送なのでJSPORTSに加入しなくても視聴できます。
NKH放送の「ワースポ×MLB」も良いですね。
元メジャーリーガー中心のキャスターが解説してくれます。
また、MLB中継においては、AKI猪瀬さんが解説者となることの多いJSPORTSがおすすめです。
まとめ
トレードデッドラインが迫る度に、大物選手のトレードが噂されますが、交渉は水面下で行われ、発表されたトレードを見て大騒ぎするのが常です。
FA・年俸調停による年俸アップは選手の権利であり、トレードは球団の権利のように捉えることもできますが、日本的に考えれば、相思相愛の関係で、プレイしやすい環境を選んで、最大のパフォーマンスを見せて欲しいとも思います。
それでも、どんなトレードが発表されるのかを見るのもMLBの楽しさの一つであることは否定できません。噂のあの超大物選手の行方は・・・。
関連サイト:ABEMA