現代野球は、先発・中継・抑えの専門投手が存在します。
投手の規定投球回数は、チームの試合数と同数のイニング数となるため、先発投手は規定投球回数を投げることで年間通してコンスタントに登板し貢献した評価が得られます。
勝利数や防御率などのタイトルも狙えます。
しかし、中継・抑え投手が規定投球回数に到達することはほとんどありません。
よって、防御率や勝率、奪三振率などの率に関する評価は、順位の対象外となります。
中継・抑え投手(リリーバー)が狙えるタイトルは、ホールドおよびセーブが主なものです。
中継投手は、ゲームを繋ぐことでホールドを獲得でき、抑え投手は、僅差のゲームをものにすることでセーブを獲得できます。
NPB(日本のプロ野球)においてもホールドおよびセーブの獲得条件が決まっていますが、MLBとはホールドの獲得条件が少し違っています。
本記事では、MLBにおけるホールドおよびセーブ獲得条件とNPB(日本のプロ野球)におけるホールド獲得条件の違いを分かりやすく紹介します。
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ホールドって何?
先ず、ホールドについて説明します。
ホールドを獲得できるのは、中継投手(先発投手と最後に投げた投手以外の登板投手)のみです。
チームが同点またはリードした場面で中継投手として登板し、リードを維持したまま投球を終え、後続の投手に引き継いだ場合に獲得できるのがホールドです。
『チームが同点またはリードした場面で登板し、リードを維持したまま投球を終える』と言う部分について、以下で説明します。
ホールドを獲得できる試合展開
ホールドを獲得できる試合展開としては、チームが同点またはリードした場面で登板し、リードを維持したまま投球を終え、後続の投手に引き継ぐ必要があります。
登板時→登板後の試合展開によりホールド獲得有無が下表のようには変わってきます。
試合展開 登板時→登板後 | MLB | NPB |
---|---|---|
同点→同点 | 獲得できない | ホールド獲得 |
負け→同点 | 獲得できない | 獲得できない |
同点→負け越し | 獲得できない | 獲得できない |
負けまたは同点→勝ち越し | 勝ち投手になれなかった 場合にホールド獲得 | 勝ち投手になれなかった 場合にホールド獲得 |
勝ち→勝ち | ホールド獲得 ※点差によっては獲得できない | ホールド獲得 ※点差によっては獲得できない ※ランナーを残し自責となる失点により同点や負け越しとなった場合は下の条件になる |
勝ち→同点または負け越し | 獲得できない | 獲得できない |
上記のようにMLBでは、登板後にチームが勝っている状況で引き継がないとホールドが獲得できません。
『勝ち投手になれなかった場合』とは、投球回でチームが勝ち越しした場合のことで、この場合勝ち投手の権利が発生し、そのままチームが勝つと勝ち投手となるためホールドを獲得できません。
登板後の試合の流れで、同点になったり、逆転されたりしても、リードした状態で降板しているので、ホールドを獲得できます。
敗け投手なのにホールドを獲得
MLBでは、救援投手がリードしている状態で降板することで条件が整えばホールドを獲得できます。
ランナーを残して降板し、後続の投手が打たれ、逆転された場合でも、降板時にチームが勝っている状態だとホールドが与えられます。
しかし、残したランナーが生還した場合、ランナーを出した投手の失点となるため、逆転された場合は、ホールドを獲得しながら敗戦投手になるケースが出てしまいます。
NPBでは、残したランナーによる失点を加味して、ホールド獲得条件となっているので、失点により同点や逆転された場合は、ホールドを獲得できません。
MLBでの具体例として、2023年4月1日(日本時間)Wソックス vs アストロズが挙げられます。
ケンドール・グレーブマン投手(Wソックス)が3−2でリードしている8回裏に登板し、2死としたもののその後満塁としてしまい後続投手と交代しました。
後続投手が打たれ3点が入り3-5と逆転され、更に1点が入り3-6で試合が終了しました。
ケンドール・グレーブマン投手は、3失点で敗戦投手になったものの、2−3で登板し2アウトを取り満塁で交代しており、リードを保っての交代だったことからホールドも獲得しました。
点差による獲得条件
『勝ち→勝ち』の試合展開で登板した場合において、登板時の点差によってはホールドを獲得できない条件があります。
点差の条件は、下表のようになります。
点差による登板場面 | ホールド獲得条件 |
---|---|
3点差以内の場面で登板 | 1イニング以上登板 |
ホームラン2本で同点になる場面 | 1アウト以上を取る |
4点差以上 | 3イニング以上登板 |
『ホームラン2本で同点になる場面』について、下表で詳細を説明します。
登板時の走者 | ホールド獲得条件 |
---|---|
走者なし | 2点差以内 |
走者1人 | 3点差以内 |
走者2人 | 4点差以内 |
走者3人(満塁) | 5点差以内 |
そして、MLBでは、2020年シーズンより、ワンポイントリリーフが禁止となりました。
登板した投手は、打者3人に投球し終える、または、イニングが終了するところまで投げる必要があります。
日本のNPBは、ワンポイントリリーフが可能なため、打者1人を打ち取ってイニング途中で交代してもホールドを獲得できる場合があります。
セーブとは?
セーブを獲得できるのは、試合の最後に投げた投手のみで、チームが勝利した場合に条件によりセーブを獲得できます。
セーブを獲得できる条件について、以下で説明します。
セーブを獲得できる試合展開
セーブを獲得できる試合展開としては、チームが勝ってリードしている状況で登板し、リードしたまま投げ終えて試合が終了する必要があります。
登板時→登板後(試合終了)の試合展開によりセーブ獲得有無が下表のように変わってきます。
試合展開 登板時→登板後 | MLB | NPB |
---|---|---|
同点→同点(引き分け) | 獲得できない | 獲得できない |
同点→負け越し | 獲得できない (敗戦投手) | 獲得できない (敗戦投手) |
同点→勝ち越し | 獲得できない (勝利投手) | 獲得できない (勝利投手) |
勝ち→勝ち | セーブ獲得 | セーブ獲得 |
勝ち→同点(引き分け) | 獲得できない | 獲得できない |
上記のように、登板時にチームが勝っていて、投球後に試合が終わりチームが勝利しないとセーブを獲得できません。
更に、チームが大きな点差でリードしている場面で登板してもセーブは獲得できません。
点差による獲得条件
セーブを獲得できない点差は、下表のようになります。
※この部分の条件は、前述したホールド獲得条件と共通です。
点差による登板場面 | セーブ獲得条件 |
---|---|
3点差以内の場面で登板 | 1イニング以上登板 |
ホームラン2本で同点になる場面 | 1アウト以上を取る |
4点差以上 | 3イニング以上登板 |
『ホームラン2本で同点になる場面』について、下表で詳細を説明します。
登板時の走者 | セーブ獲得条件 |
---|---|
走者なし | 2点差以内 |
走者1人 | 3点差以内 |
走者2人 | 4点差以内 |
走者3人(満塁) | 5点差以内 |
日本のNPBでもセーブを獲得できる条件は同じです。
ホールドポイント
ホールドとよく似た記録にホールドポイントがあるので簡単に説明しておきます。
ホールドポイントは、MLBでは記録として扱われていません。
ホールド数に救援勝利を加えたものがホールドポイントです。
NPBのみの記録です。
NPBでは、最多ホールドポイントの投手を最優秀中継ぎ投手として表彰しています。
ホールドおよびセーブ記録
ホールドおよびセーブ記録を簡単に紹介しておきます。
ホールド記録
ホールド記録は、ホールド獲得条件の違いもあり、NPB記録の方が多くなっています。
MLBは、1999年以降を公式記録としており、トニー・ワトソン[246]が通算最多となっています。
現役はジョー・スミス[228]となっていますが、2023シーズンは登板していません。
NPB 宮西 尚生[398]は、現役続行中で頭抜けた成績を継続中です。
2位は山口 鉄也[273]、3位は浅尾 拓也[200]です。
現役で続いているのは又吉 克樹[157]となっています。
項目 | MLB 1999-2022年公式記録 | NPB -2022公式記録 |
---|---|---|
通算ホールド 最多記録 | トニー・ワトソン 246(2022引退) | 宮西 尚生 398(2023継続中) |
通算ホールド 現役最多 | ジョー・スミス 228 | 宮西 尚生は現役 現役2位 又吉 克樹 157 |
シーズン ホールド最多記録 | ジョエル・ペラルタ 41(2013) トニー・ワトソン 41(2015) | 清水 昇 50(2021) |
MLB日本人選手 ホールド記録 | 田澤 純一 88(2009-2019) | ー |
セーブ記録
セーブ記録では、MLBのシーズン試合数も多いことも影響しているのか、信じられない成績が残っています。
600セーブ以上を2人の選手が記録しています。
『マリアノ・リベラ[652]』『トレバー・ホフマン[601]』の2名で頭抜けた記録です。
3位はリー・スミス[478]です。
NPBは、岩瀬 仁紀[407]が頭抜けた成績を残しています。
2位は、高津 臣吾[286]、3位は、佐々木 主浩[日米通算252]です。
項目 | MLB 1999-2022年公式記録 | NPB -2022公式記録 |
---|---|---|
通算セーブ 最多記録 | マリアノ・リベラ 652(2013引退) | 岩瀬 仁紀 407(2018引退) |
通算セーブ 現役記録 継続中 | クレイグ・キンブレル 394 | 平野 佳寿 221 |
シーズン セーブ最多記録 | フランシスコ・ロドリゲス 62(2008) | デニス・サファテ 54(2017) |
MLB日本人選手 セーブ記録 | 佐々木 主浩 129(2000-2004) | 佐々木 主浩 NPB:252 NPB+MLB:381 (2005引退) |
2023MLB投手成績
2023年のMLBにおける投手成績は以下のようになっています。
ア・リーグ投手成績
ナ・リーグ投手成績
まとめ
2023MLBにおけるホールドとセーブについて簡単に説明しました。
救援投手は、負担を軽減するために、少ない投球練習で登板できるように調整しています。
いつ呼ばれるのか明確な時間は決まっていません。
登板が無くてもブルペンで準備が必要です。
ピンチを救えばヒーロー、逆転されればその逆です。
救援投手の勲章である『ホールド』『セーブ』は、積み重ねた数では計り知れない努力の賜物だと思います。