WECとIMSAのハイパーカーの違いを簡単解説!LMHとLMDhは何が違うの?

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FIA 世界耐久選手権(WEC)のLMH(ル・マン・ハイパーカー)とIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権(WTSC)のLMDh(ル・マン・デイトナ・h)の両規定のハイパーカーで相互レースへの乗り入れが実現できるようになりました。

そして、LMHとLMDhを「ハイパーカー」に名称を統一すると発表しています。

WECは、国際自動車連盟 (FIA) とフランス西部自動車クラブ (ACO) が共同で開催するFIA 世界耐久選手権 です。

WTSCは、国際モータースポーツ協会(IMSA)が開催するAウェザーテック・スポーツカー選手権となります。

相互レースへの参加が可能になることで、自動車レースへの参加も増え、見る方の楽しさも数倍アップしてきます。

2023年以降は、WEC,WTSC共にハイパーカーレースで一層益々盛り上がる展開となってきます。

※FIA:Fédération Internationale de l’Automobile
※ACO:Automobile Club de l’Ouest
※IMSA(イムサ):International Motor Sports Association
※WEC(ウェック):World Endurance Championship
※WTSC:WeatherTech SportsCar Championship

※本記事の情報は2023年1月時点のものです。
※現時点の正確な情報は各放送配信サイトで確認の上、ご利用ください。

LMH(ル・マン・ハイパーカー)とLMDh(ル・マン・デイトナ・h)の違い

LMH(ル・マン・ハイパーカー)は、WECの規定車両,LMDh(ル・マン・デイトナ・h)は、WTSCの規定車両と言う区分になります。

2つの異なる規定で作られた車両ではありますが、性能調整により同等性能に揃えて、相互のレースに参入していこうとしています。

LMHとLMDhの違いを説明するために、開発費用,出力性能,車両サイズの3つの区分で説明していきます。

簡単に違いをまとめると下表のようになります。

LMHとLMDhの規定の違い

開発費用

根本的にLMHは、開発の自由度が高く、メーカーの独自色を出しやすくなっていますが、開発費用は莫大な規模になってきます。

ほとんどの部分を規定内で設計開発できることで、LHMの開発費用は、数億ユーロと言われます。

一方のLMDhは、シャーシやハイブリッドシステムが共通化されていて、新規に開発する部分を削減できます。

シャシーは4社(リジェ、オレカ、ダラーラ、マルチマチック)のコンストラクターの中から選択できます。

ハイブリッドシステムは、モーターはボッシュ、バッテリーはウイリアムズ・アドバンスド・エンジニアリングと共通化されています。

タイヤもミシュランのワンメイクです。

そしてBoP(性能調整)によって、LMHとの性能差が整えられます。

車両開発コストの考え方によって、参入メーカーに違いが出てきています。

出力性能

LMHとLMDhの最高出力は680PSとなっています。

ただし、ハイブリッドシステムへの考え方に違いがあります。

LMHの出力性能

LMHのハイブリッドシステムは、モーター出力272PS以下であり、電気モーターとエンジン(内燃機関)の合計でmax680PSで設計できます。

ハイブリッドシステム搭載車のエンジン(内燃機関)出力はmax650PSです。

また、ハイブリッドを搭載しない選択もでき、エンジン(内燃機関)だけならmax680PSとなります。

エンジン(内燃機関)とハイブリッドシステムの組み合わせ幅が大きく、電気モーターは前輪を駆動し、エンジン(内燃機関)は後輪を駆動するため、4輪駆動のAWSである点が特徴になります。

自由度の大きなハイブリッドシステムですが、利用制限も設定されています。

・スリックタイヤ装着時:120km/h以上
・レインタイヤ装着時:140〜160km/h以上
・120km/h未満で車がピットに到着するまで

LHDhの出力性能

LHDhは、全車ハイブリッド搭載となります。

ハイブリッドシステムのモーター出力はmax68PSです。

電気モーターとエンジン(内燃機関)の合計でmax680PSとなります。

電気モーターとエンジン(内燃機関)共に後輪を駆動する後輪駆動車となります。

車両サイズ

LMHとLMDhの車両サイズには大きな違いがありません。

全長がLMH:5,000mm以下なのに対して、LMDh:5,100mmとなっています。

その他、全幅2,000mm以下、全高1,150mm、ホイールベース3,150mm、最低車両重量1,030kg,エアロ性能など同等な仕様となっています。

2023WECおよびIMSA(WTSC)のレース日程

WEC2023シーズンは全7戦、WTSC2023シーズンは全11戦が予定されています。

WEC2023の開幕は、3月17日セブリング1000マイルからとなり、ル・マン24時間レースは第4戦の6月10日〜11日で予定されています。

WTSC2023は、1月26日29日デイトナ24時間レースで開幕し、全11戦の内9戦でGTP(ハイパーカー)が見られます。

2023年WEC世界耐久選手権 開催予定
WTSC2023の日程

ハイパーカー参入メーカー

WECのLMH車両とWTSCのLMDh車両の性能差を同等にすることで、例えば、「デイトナ24時間レース」と「ル・マン24時間レース」の両方に参戦できることになります。

この規定の統一は、多くのメーカーが参入を表明していることで判るように、波及効果の大きなものになっています。

主な参入メーカーの特徴を簡単に紹介します。

トヨタGR010ハイブリッド(LMH)

「トヨタGR010ハイブリッド」は、2021-22年とル・マン24時間を制した成熟マシンですが、ライバルの少ない中での勝利とも言え、今後は新規車両の開発の噂も絶えません。

「トヨタGR010ハイブリッド」のエンジンは、3.5LのV型6気筒4バルブ直噴ツインターボ搭載で最高出力が680PSです。

ハイブリッドは、ハイパワー型・トヨタ・リチウムイオンバッテリーを搭載し、200kW(272PS)のモーターを駆動します。

エンジンとハイブリッドモーターで最大952PSまで発揮できる車両で、規定およびBoP(性能調整)によって、所定の出力に抑えてレースを走っています。

全長:4,900mm

全幅:2,000mm

全高:1,150mm

車重:1,040kg

グリッケンハウス007 LMH

「グリッケンハウス007 LMH」は、ハイブリッドシステムを搭載していません。

エンジンは、ピポ・モチュール製V8ツインターボを搭載。

全長:4,991mm

全高:1,224mm

車重:1,100kg

プジョー9X8(LMH)

「プジョー9X8」は、WEC2022シーズンから登場した新車両で、リヤウイングの無い斬新なスタイルで注目を集めました。

エンジンは90度V型6気筒 2.6リッター ツインターボ

電気モータは最大出力200kW

900Vバッテリー

で構成し、合計出力は500kW(約680PS)に制限しています。

全長:4,995mm

全幅:2,000mm

全高:1,145mm

車重:1,030kg

フェラーリ499P(LMH)

2023WECから参入予定のフェラーリは、1気筒あたり499ccからネーミングした「フェラーリ499P」を投入します。

フェラーリ499Pは、V型6気筒3リッター ツインターボ エンジンを搭載します。

デビュー戦は、WEC2023 第1戦 セブリング1000マイル(2023年3月17日 決勝)が予定されています。

アキュラARX-06

アキュラは、ホンダが北米に展開した人気の高級車ブランドです。

LMDh車両の「アキュラARX-06」を投入しています。

WEC2023への参戦予定はありませんが、2022年のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権(WTSC)ではプロトタイプカークラス(DPi)でマニュファクチャラーチャンピオンとなっています。

2023年からIMSAの最上位クラスがLMDhとなり、アキュラARX-05(3.5リッターV6)から新型アキュラARX-06(2.4リッターV6ツイン直噴ターボ)に変わりました。

新型アキュラARX-06のエンジンは、HPD(ホンダ・パフォーマンス・デベロップメント)が開発したもので、2.4リッター(V6ツイン直噴ターボ)とターボ化した小排気量エンジンになっています。

今年もIMSAを制してもらいたいところです。

ポルシェ963(LMDh)

ポルシェは、LMDh車両「ポルシェ963」で2023シーズンよりWTSC およびWECに参戦を表明しています。

「ポルシェ963」のエンジンは、4.6リッターV型8気筒ツインターボです。

ハイブリッドパワートレインを搭載し、規定の680PSを出力します。

2023デイトナ24時間レースで姿が見れるのか?楽しみなところです。

BMW MハイブリッドV8(LMDh)

BMWは、LMDh車両の「BMW MハイブリッドV8」で2023年のIMSA「GTP」に参入しています。

WECには、2024年から参戦する予定です。

「BMW MハイブリッドV8」は、4.0リッターV型8気筒ターボ搭載エンジンとハイブリッドパワートレインにより規定の680PSを出力します。

シャシー・サプライヤーは、ダラーラを選択しています。

ランボルギーニ(LMDh)

ランボルギーニは、LMDh車両を2024シーズンから投入する予定です。

90度V型 8気筒 ツインターボ エンジンとハイブリッドパワートレインを搭載し、規定の680PSを出力します。

今後の動向に注目したいところです。

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